先生と私の三ヶ月
「こんな私をお父さんとお母さんが見たら怒るだろうな」
タオルで髪を拭きながら口にした。
隣に座る先生がクスッと笑った。
私たちはサンルームの藤の長いすに腰かけていた。開いたガラス戸から入ってくる夜風が気持ちいい。今夜も綺麗な月が出ている。
「家の中で水のかけあいっこをするなんて、本当、ばかばかしい事をしました」
「ガリ子はそういう事、絶対にしちゃいけないって思う子どもだったんだろうな」
「ええ。学級委員のガリ子ですから」
先生と目が合う。いつもだったら居心地悪く感じるのに、今は先生の隣が心地いい。
「私ね。いい子でいなきゃいけないって、大人の顔色をうかがうような子供だったんです。本当は木登りもしたかったし、スケボーも乗りたかったけど、危ないからダメっていうお母さんの言葉に逆らえなかったんです。女の子なんだからおしとやかにって言われて。それでピアノ習わされて。まあでも、結果的にピアノは好きになったから良かったんですけどね」
こんな話、純ちゃんにもした事がない。なぜか今夜は自分の事が話したくなった。
「結婚も。親のすすめた相手と結婚して。本当は恋愛結婚がしたかったんですけど、そういうの私には無理かなって思っちゃって。先生の小説に出てくるヒロインみたいに一途に誰かを想うような恋をしたいとは思っていたんですけどね」
一度でいいから誰かを深く愛し、愛されてみたかった。こんな事思うのは高望みだとわかっていても。
「本当は結婚したくなかったのか?」
「えっ」
先生の言葉にドキッとした。
タオルで髪を拭きながら口にした。
隣に座る先生がクスッと笑った。
私たちはサンルームの藤の長いすに腰かけていた。開いたガラス戸から入ってくる夜風が気持ちいい。今夜も綺麗な月が出ている。
「家の中で水のかけあいっこをするなんて、本当、ばかばかしい事をしました」
「ガリ子はそういう事、絶対にしちゃいけないって思う子どもだったんだろうな」
「ええ。学級委員のガリ子ですから」
先生と目が合う。いつもだったら居心地悪く感じるのに、今は先生の隣が心地いい。
「私ね。いい子でいなきゃいけないって、大人の顔色をうかがうような子供だったんです。本当は木登りもしたかったし、スケボーも乗りたかったけど、危ないからダメっていうお母さんの言葉に逆らえなかったんです。女の子なんだからおしとやかにって言われて。それでピアノ習わされて。まあでも、結果的にピアノは好きになったから良かったんですけどね」
こんな話、純ちゃんにもした事がない。なぜか今夜は自分の事が話したくなった。
「結婚も。親のすすめた相手と結婚して。本当は恋愛結婚がしたかったんですけど、そういうの私には無理かなって思っちゃって。先生の小説に出てくるヒロインみたいに一途に誰かを想うような恋をしたいとは思っていたんですけどね」
一度でいいから誰かを深く愛し、愛されてみたかった。こんな事思うのは高望みだとわかっていても。
「本当は結婚したくなかったのか?」
「えっ」
先生の言葉にドキッとした。