先生と私の三ヶ月
目的地にたどり着くと先生がぐったりした表情で睨んでくる。

「お前は俺を殺す気か」
「5時前に着きましたよ」

 ただ今の時刻4時50分。10分も余裕がある。どうだと言わんばかりの態度で先生を見た。

 先生がため息をついた。

「確かに5時前だ。でもな、あんな走り方したら危ないだろ!」
 追い越し車線に行かせようと横からハンドルを操作しようとしたくせに、危ないなんてよくも言えたものだ。

「文句があるなら、先生が運転すればいいじゃないですか。それか、タクシーでも良かったんじゃないんですか?」
 先生が気まずそうに頬をかいた。

「タクシーを呼んでいる時間がなかったんだ。急にお迎えを頼まれたから」
 頼まれた? お迎え? それってつまり、横暴な先生を必死にさせる程の人がこの世にいるって事?

 一体どこの誰?
 というか誰を迎えに……?

 目の前にはピンク色の二階建ての建物があり、看板には『さくら幼稚園』とあった。

「ここは幼稚園ですか?」
「それ以外の何に見えるって言うんだ。当たり前の事を聞くな。行くぞ。お迎えは5時までなんだ」
 先生が車を降りる。私も続いて降りた。
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