先生と私の三ヶ月
「ガリ子何突っ立ってんだ。行くぞ」
 流星くんと手を繋いだ先生が歩き出した。

「かおる。あの人は?」
 流星くんが不思議そうな顔をする。

「俺の召使い」

 召使い……。

 そうだよね。夜中にコンビニに行かせるのは召使いだからだよね。気にしていなかったけど、なんかもやっとする。

「流星も何でもあのおばさんに言っていいんだぞ」
 お、おばさん? もう29だけど、おばさんは酷い。

「わかった。召使いのおばさんに何でも言う」
 流星くんが興味津々の様子でこちらを見る。
 このまま召使いとして流星くんにまでこき使われては困る。訂正しなければ。

「お姉さんは召使いじゃなくて、望月先生のアシスタントよ」
 流星くんの隣で立ち止まって、目線を合わせる。目の形が先生にそっくり。この子もイケメンだ。やっぱり先生の子供?

「アシスタントって何?」
「先生のお仕事のお手伝いをするの。ご飯作ったり、お掃除したり、お買い物に行ったりして」

 流星君が考えるように私の顔を見つめる。
 何か変な事言った?

「わかった! 妻だ!」
 
 流星くんが目をキラキラさせた。
 
 つ、妻!

「バカ、誰がこんな奴、妻にするか」
 先生が流星くんの頭を平手でパンと叩いた。

「いってーな。かおる」
 流星君が恨めしそうに先生を見上げる。

「こいつは妻じゃなくて召使いだ。ガリ子も余計な事言うな。行くぞ」
 怒ったような態度で先生が歩き出す。何よ。そんなに『妻』が嫌だった? 私だって先生の妻なんて嫌ですからね。私には純ちゃんがいるんだから。
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