先生と私の三ヶ月
 安全運転で家に帰り、スーパーの袋を持って台所に立った。先生は流星くんと二階に行ったので、ようやく一人になれた。

 流星君と先生の関係がやっぱりよくわからない。車の中でも親子みたいに二人は仲良しだった。先生の子どもじゃないと言うのなら誰の子なんだろう?

 そもそも、先生にお迎えを頼むなんて、一体誰が?

 子どものお迎えって信頼できる相手じゃないと頼まないよね。もしかして先生が今付き合っている恋人の子どもとか?

 恋人か……。

「ガリ子!」
 甲高い声で呼ばれて、ドキッとした。

 振り向くと幼稚園の制服からヒーローがプリントされた赤Tシャツとジーパンに着がえた流星君が台所の入り口に立っていた。

 ガリ子って呼んだのは流星君か。先生がそう呼んでいるからマネしているのね。

「流星君、私はガリ子じゃなくて、今日子ちゃんとか、お姉ちゃんって呼んで欲しいな」
「かおるがガリ子でいいって言ってたよ」

 流星君にまでそう呼ばれるのは嫌だ。私は召使いじゃなくて、アシスタントなのよ。流星君が本当に召使いだって思っちゃうじゃない。

「流星君、お姉ちゃんは嫌だな。可愛く今日子ちゃんって呼んでね」
「ガリ子の方が呼びやすい。ガリ子がいい。ガリ子、ガリ子、ガリ子、ガリ子!」
 流星君からガリ子コールが続く。

 もう好きに呼んで。どうせ私はガリ子ですよ。
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