先生と私の三ヶ月
「ニンジン切ればいい?」
 流星くんがまな板の上の包丁を持った。

「ダメよ。危ないから」
 流星くんから包丁を取ろうとしたら、さくっ、さくっとまな板の上のニンジンを切り始める。意外にもしっかりとした動きでニンジンを乱切りにしていく。

「上手ね」
「うん。かおるに教えてもらったんだ」
 へえー、先生って台所に立つ人だったのか。お手伝いさんがいたと聞いていたから、料理は全くやらないと思っていた。先生、どんな料理を作るんだろう?

「望月先生はご飯も一緒に作ってくれるの?」
「うん。かおるの所に来るといつも一緒に作るよ。前に来た時はミートソース作った。どっちが上手に野菜をみじん切りに出来るか競争したんだ」
「どっちが勝ったの?」
「かおる」
 流星君が不貞腐れた顔をする。

「かおる、おとなげなんいんだ。男同士の勝負だから手加減はしないとかって言ってさ」
「流星君の事、同じ男として認めてくれているのね」
 ニンジンを切っていた流星君が手を止めてこっちを見上げた。

「どうしたの?」
「ガリ子って、いい事言うね」
 えへっと流星君が微笑んだ。うわっ、天使の笑顔だ。可愛い。望月先生が流星君を見て、穏やかな顔をするのもわかる。子どもっていいな。
 
 そう言えば、結婚した時はすぐに子どもが欲しかったんだよね。一人っ子だったから、出来れば子供は二人以上欲しいなんて夢描いていたっけ。

 でも、計画通りにはいかなかった。
 それで純ちゃんともギクシャクし始めた気がする。
< 50 / 304 >

この作品をシェア

pagetop