先生と私の三ヶ月
「わからないのか?」
 先生の声が苛立ったように響く。

「わかりません。先生がお仕事で忙しそうでしたから、一緒に楽しく遊びましたが、それがいけなかったんですか?」

 まさか流星くんを独占できなかった事で子供っぽい焼きもちでも妬いてるの?この人ならありそうな気もする。

「そうか。わかった」
 先生が感情を消したような冷淡な顔をする。

「何を言っても君にはわからないようだ」

 ガリ子じゃなくて、“君”?
 急にどうしたの?

「君はクビだ。今すぐ荷物をまとめて出て行きなさい」

 えっ、クビ?

「もう二度と会う事はないだろう。さようなら」
 それだけ言うと先生はリビングを出て行った。訳がわからない。いきなりクビって何?

 この半月、私なりに最大限の努力をして先生に仕えた。深夜のコンビニだって行ったし、ベンツで高速も走ったし、先生の頼み事は全部聞いて来たんだから、私に落ち度はないはず。

 リビングを出て、階段の所で先生を捕まえた。

「待って下さい! 今のは何ですか? 訳がわかりません。納得できる説明をして下さい」

 階段の方を向いていた先生がこっちを向いた。険しい表情をしたままだった。

「私はクビになるような事してません! いくら先生でも勝手過ぎます!」
「勝手過ぎるのはお前の方だ!」
 低い怒声が耳につき刺さった。
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