先生と私の三ヶ月
 私が勝手過ぎるですって! 勝手なのは先生だ。どれだけこの半月、振り回されたと思っているの。先生の言葉が全く納得いかない。

「私の何が勝手だって言うんですか?」
「流星に父親と話しが出来るように頼んであげると言っただろ?」
「言いましたけど。何が問題なんですか?大人の都合でパパに会えないなんて流星くんが可哀そうです。離婚したからって会わないなんておかしいですよ」

「流星を捨てた父親だぞ」
 怒りのこもった黒い目がこっちを向いた。

「あいつは……流星の父親は、流星の3歳の誕生日に女と駆け落ちしたんだ」
 大きな瞳から悲しみと悔しさのようなものが伝わってくる。

 駆け落ちしただなんて、想像もしなかった。
 そんな事情があったなんて……。

「父親がどこにいるのかもわからない」
 
 だから外国に行ってるって……。

 幼い流星君を傷つけない為の配慮だったんだ。私はその配慮を壊す事を言ってしまったのか。

 でも、だったら……

 そういう大事な事は教えておいくれたって……。

 先生はいつも何も言ってくれない。先生のそばに私を置くなら大事な事はちゃんと教えて欲しい。私だって流星君を傷つけるような事は言いたくなかった。そもそも流星君の事だって、今日いきなり知ったし、前もって甥がいる事を話してくれてたっていいじゃない。父親については触れないようにって注意事項を教えておいてくれたっていいじゃない。

 私だけが悪いっていきなりクビにするなんて、酷い。
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