先生と私の三ヶ月
「言いたい事はそれだけか?」

 静かな階段ホールにつき放したような低い声が響いた。

「……はい」
 涙を拭って頷いた。

「流星が起きる前に出て行ってくれ」
 私を切り捨てるように先生が言った。
 驚いて顔を上げると、先生は純ちゃんと同じ冷たい目をしている。その目はもう私を必要としていないと言っているみたいだ。

 言いたい事は言えって言ったくせに、先生も私を拒絶するんだ。
 先生ならわかってくれると思ったのに。 

「お世話になりました」

 先生に深く頭を下げて、自分の部屋に駆け込んだ。苦しくて、これ以上、先生と一緒にいられない。

 先生のそばで少しは強くなったと思ったけど、やっぱり私は弱い。先生に拒絶されたら、尻尾を巻いて逃げるしかない。

 最後に流星君に謝りたかった。余計な事を言ってごめんねって。私が間違っていたよって。だけど、その事を話したら、パパが流星君を置いて、出て行った事を言わなくちゃいけない。それを言う資格は部外者の私にはない。

 先生の言った通り、私の正義感は安っぽい。
 部外者のくせに、流星君のパパの事にクビを突っ込んで。

 こんな自分が嫌になる。

 私に出来る事は先生が言った通り、流星君が起きる前に出て行く事だ。私がいなくなれば、電話の件も忘れてくれるかもしれない。

 あぁ。三ヶ月の契約なのに、半月でクビか。
 悔しいな。涙が止まらないや。
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