先生と私の三ヶ月
「あの、視線が痛いのですが」
「どっちかだな」
「何がですか？」
「ガリ子の旦那はお前に興味がないから眼鏡の事を言わないのか、あるいは……」
　先生が言葉を飲み込んだ。その続きはさらに私を落ち込ませる事だから配慮したんだ。

　先生の指摘は当たっている。純ちゃんは私に興味がない。結婚した時は大切そうに私を見ていた瞳も、いつからか冷たくなった。私が必死になる程に純ちゃんの心は離れていくみたいだった。

　胸が痛い。わかっていても、第三者の先生に言われるとへこむ。

「実はそうなんです。純ちゃんは……主人は私に興味ないんですよね。さすが先生。指摘が的確過ぎて驚きます。そっか、私の眼鏡ってそんなにダサいんですか。純ちゃん、何も言ってくれなかったから気づかなかったな」

　あははと、渇いた笑い声を立てて笑った。笑い話にすれば気が楽になるかと思ったけど、顔が強張って上手く笑顔を作れない。こんな酷い顔、先生に見せたくないのに。

　先生に背を向けようとした時、肩を掴まれた。

「無理に笑うな。気持ちを押し込めるなと言っただろう」

　ぎゅって先生に抱きしめられる。

　目の前には先生の水色のシャツ。先生の匂いがする。物凄くいい匂い。この匂いが大好き。鼻を押し付けて鼻腔いっぱいに嗅ぎたいぐらい。

　先生はズルイな。意地悪な事を言ったと思ったら、やっぱり優しい。
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