先生と私の三ヶ月
「ガリ子。お前は魅力的な女だよ。鏡で素顔の自分をよく見た方がいい。色白の顔は小さいし、顎のラインが綺麗だ。鼻も小さくて可愛い。くっきり二重の大きな目は愛くるしくて、美しさと可愛らしさの両方がある。俺は初めてお前に会った時、一度会ったら忘れられない程の美しい女だと思ったよ。今もそう思っているし、お前が綺麗すぎてドキドキもしている」

 先生は一体誰の事を言っているの?

「ガリ子、きょとんとした顔をするな。俺は今、お前の事を言っているんだぞ。本当に鈍感なやつだな。お前は自分の美しさにはとことん鈍感だ。そこが魅力的でもあるんだが」
 先生がクスッと笑い、幼い子にするように、ぽんぽんと私の頭を撫でた。

 私が美しい――?

「今夜はゆっくり休め。俺は朝まで下のダイニングルームで仕事をしているから余計な心配はするな」

 驚いて瞬きをしていると、先生は私の右手に眼鏡を握らせ、それからノートパソコンを持って、また私の前で立ち止まった。

「じゃあな」
 もう一度、私の頭を撫でてから先生は出て行った。

 パタンとドアが閉まった瞬間、我に返る。

 えっ、えっ、えっ――!

 一度見たら忘れられない程美しい女って誰の事――!?
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