春待ち遠し〜短編集〜


もう10年以上前の事なのか…

居酒屋のお店はあれから変わらない姿だ。

『康夫くん、お店、継ぐみたいなんだね』

優子は武司にお酒をつぐ。

『あぁ、アイツ、高校んときはあんな酒臭い店なんか潰れればいいのにって言ったくせにな』

苦笑しながら、テキパキしながら働く康夫を見る。

『結局、親の背中を見て育つものなのよ、子供って…。』

『でも、優子は…さ…。あ、いや』

思わず10年前の彼女の姿を思い出す。


『似てるでしょ?母とアタシ…。』


少しさみしげにうつむく優子。


確か、こんな表情を高校1年の夏もしていた。

武司はあの日を思い出す
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