春待ち遠し〜短編集〜
あれは夏の暑い日…。


『タケ、ウォークマン返すね』

カセットテープの黒いウォークマンを握りしめてる優子。

静かな表情をしていた。

『別に、いつでもいいんだぜ、返すのは。』

下をうつむきながら優子は少し笑う。

『良かったよ、JーWALKの何も言えなくて。夏。』

精一杯の笑顔。
ギターの線が切れそうなギリギリの張り詰めた顔。

『やっぱりね、アタシんち、離婚するみたい。』

『えっ?』

その言葉の重さをどう受け止めればいいか分からなかった。

『バカだよね、お母さん、若い男とどっか行ったんだって。あんな女に絶対なってはいけないよね。アタシ達の事、なんだと思ってるのかな。疑っちゃうよ…』
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