夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな情愛〜
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それからは慌ただしかった。菜胡が先にシャワーを浴びて身支度を整えてから昼食の支度に取り掛かった。米を炊飯器にセットして、持ってきていた肉団子をレンジで温め直しサラダ菜と共にお皿に盛り付け、きのこの佃煮は小鉢にあける。冷蔵庫にあるものを使って、味噌汁と副菜と浅づけ、冷茶も作った。一時間も冷やせば充分美味しく飲める。
その間、棚原は乱れた寝室を片付け、掃除機をかけ、洗濯機を回して風呂掃除を済ませて来客に備えた。
「なんだか、夫婦みたいな過ごし方だな」
棚原がキッチンにいる菜胡を眺めながらつぶやいた。
夜は愛し合い、共に夜明けを眺めて一日が始まる。それぞれにやる事を分担しながら、時折視線が合わさると微笑み合う。胸の奥がほんわかと温まって、泣きたいくらいの幸せを感じていた。
指輪を着け始めた頃には想像もしていなかった。こんなに穏やかで甘やかで、幸せな日曜が来るなんて思いもよらなかった。
――この先もずっと……。
自身の身体にある痣が気持ち悪かったらやめてくれて構わないと話してきた菜胡の目は、これから抱かれる事の緊張とは違った、怯えた目をしていた。聞けば、初めてできた彼氏から投げつけられたのだと話してくれた。
腑が煮えくり返る思いがした。痣があろうがなかろうが菜胡には変わりがない。だが、痣があった事で菜胡と出会えたのだという思いは確かで、この時感じた幸せな気持ちを、何年何十年と菜胡と紡いで行きたい、そういう気持ちが芽生えはじめた。