夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな情愛〜

2

 日曜日、大原は九時頃に病院へ到着した。病棟へあがり、浅川の勤務を確認するためナースステーションに顔を出した。

「あれ、大原さんおはようございまーす。日曜に珍しいですね」
 若いナースが声を掛けてきたが、彼女の後ろからやってきた看護部長からも声が掛かった。

「大原さん、こっち」
 ステーション奥にある休憩室へ誘われた。入ってすぐのソファに、隣同士で腰を下ろした。

「例の件でしょ? 浅川は準夜勤だったから部屋に居ると思うわ。帰り際にあの子に言ったのよ、沙汰が下りるまで寮から出ないようにって。陶山先生が夜勤の間、何度か話しかけていたんだけど、あの子頑なに知らないを言い張っていた。怯えているような目つきだったから、自分が何をしでかしたかわかってたわね……菜胡さんは? いま安全なところにいるの?」
 冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出して目の前へ置いた。それぞれに開栓して喉を潤す。

「とても安全なところ。恋人の家だもの」
「そう……頼れるところがあってよかった」
 冷えたペットボトルを両手で包み、転がしつつ話す。

「浅川は、どうなるの、警察に?」
「警察沙汰にはしないと思う。こう言ったらなんだけど菜胡さんは無事だったわけだし。棚原先生は院長に報告のうえ必要なら警察に、と言っていたけど、それとは別に、看護部としても何らかの処分はしないと思っているし、本人の態度次第では解雇も止むを得ないかと思うのよ。……看護師は、患者の命に一番近いところで動く者よ。その者が他者の尊厳を軽んじるなんてあってはならない。この先、あの子を信用できないし任せられないわ」

「そうよね……。あたしこれから浅川の部屋に行ってみるわ、ありがとう」
< 68 / 89 >

この作品をシェア

pagetop