夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな情愛〜
病棟の奥にある非常階段を降り、寮を目指した。
「まったく、この、古臭い、寮! 建て替えるか、すればいいのに……はぁ、はぁ……手すりも、ないんだもの……!」
息を切らしながらようやく三階まで上がった。ツカツカと浅川の部屋の前までやってきて、戸を叩いた。
「はあい」
呑気な声がした。
ガチャ、と戸が開いて、そこに居たのが大原だとわかると驚いた顔をして、無言で戸を閉めた。
「何で閉めるわけ! 後ろめたい事があるの!」
ノブを思い切り引けば、浅川は入り口に座り込んでいた。
「……なんでしょ」
「なに?」
「大原さんもっ……菜胡の、味方なんでしょ」
浅川の肩を掴んで立ち上がらせ、おもむろに頬を叩いた。パン! と乾いた音が響く。
「味方もクソもないでしょ! あんた何したかわかってるの?! 警察に突き出されてもおかしくない事をしたのよ?! 他人の尊厳を傷つけていい理由なんか無いの! 何であんなことしたの!」
泣き崩れた浅川はポツリポツリと言葉を紡ぎ始めた。