夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな情愛〜

 浅川は院長らの判断を待たずに退職した。一連の騒ぎを起こした事を謝罪する手紙と共に辞表を病棟の師長へ届け、その足で故郷へ帰っていった。
 彼女の故郷は四国にあり、地元に帰れば看護学校時代の友人も多くいる。今回は菜胡への嫉妬から足下を崩してしまったが、本来の彼女は物怖じもせず自信に溢れた気持ちの強い子だ。
 病院の敷地を出ていく彼女の後ろ姿を見送りながら、一年目、悔しそうな顔で大原の小言を聞いていた表情を思い浮かべた。手際が悪くて樫井にダメ出しをされていた浅川、患者から話しかけられて夢中になり過ぎ、大原が手を引いて連れ戻した時の浅川。どの浅川も一生懸命だった。菜胡が憧れたのも、そんな浅川だったのだ。

「がんばんなさいよ……」
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