例えば今日、世界から春が消えても。
長袖を意地でも着続けている僕について先輩が陰口を叩いていた事も知っていたし、いずれこうなるだろうと覚悟していた。


でも、実際にその瞬間が訪れた時、僕は自分でも動揺してしまう程に感情の整理が出来なくて。


けれど、感情のままにカフェを飛び出そうとした僕に、彼らは今までに見たこともない真剣な瞳を向けてこう言ったんだ。


『私、フユちゃんがこのまま無理してるのは見てられない』

『脱ぎたくないなら脱がなくていいし、話したくないなら話さなくていい。…でも、俺らはチームだから。いつでも頼っていいって事だけは忘れんなよ』


と。



その瞬間、彼らの僕を思いやる気持ちが雪崩のように僕の心に押し寄せてきて。


話すつもりなんてなかったのに、伝えたら軽蔑されて終わりだと思っていたのに、

気づいた時には、自分の過去の全てを洗いざらい口にしていた。


2人は、いつかのさくらのように目に涙を溜めながら僕の話を聞いてくれて、態度が急変する事はなくて。


そこから僕達は以前よりも仲を深め、いつの間にか部活動に限らず学校生活の全てにおいて行動を共にするようになった。


そして有り難い事に、僕達の関係は、僕が部活を中途半端な時期に退部してからも尚続いている。




エマがあの時と同じ質問をさくらにしたという事は、

2人も、さくらの秘密に一歩近づいているんだ。
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