例えば今日、世界から春が消えても。
どうしたらいい?

意地悪な神が与えた残酷な運命に翻弄されゆく彼女に、僕は何が出来る?


焦る頭を回転させ、僕は必死に答えを見つけようとするも。



「皆、将来の夢ってあるよね?」


自分の中で全てが完結してしまったらしいさくらが、口火を切った。


「え、急にどうし」


「答えなくても大丈夫。皆、何かしらの夢は持ってるはずだもん」


驚いた様子の大和が口を挟むのも許さず、いつの間にかもの悲しげな笑みを浮かべたさくらは言葉を続けた。


困惑した様子で、エマと大和が同時に頷く。


でも悲しい事に、僕はそれに同調する事が出来なかった。



幼い頃は、大和のようにサッカー選手になりたかった。

両親が死んでからの夢は、自分も早く両親と同じ所に行く事で、

さくらと出会ってからの夢は、ずっと彼女の隣で、その溢れんばかりの笑顔を見ていたいという事。


そして、願わくば、

“偽の彼氏”ではなく、さくらの“本当の彼氏”になりたいという事。


でもこんなのは将来の夢ではないし、文理選択もぼんやりと決めてしまった僕は、高校卒業後の進路すらきちんと決められていなかった。


彼女に言われて気づいたけれど、僕には、将来の夢と呼べるものが何も無いのかもしれない。


何の反応を示さない僕に気づいたのか、彼女はゆっくりと首を傾ける。
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