例えば今日、世界から春が消えても。
いや、リストの名前よ…、と苦々しい顔で零す大和を完全に無視した彼女は、待ってましたとばかりにリュックから例の手帳を取り出した。
「一応やりたい事のうちの2つは叶ってるんだけど、今3つ目を思い付いたから書くね」
紙ナプキンの入った箱の横に取り付けられていたペンを拝借した彼女は、リストにとある文章を書き足す。
その手は一切の迷いもなく動いていて、彼女はずっと前からその言葉を書く事を決めていたのだろうと感じた。
「何て書いたの?」
彼女がペンを置いたタイミングを見計らった僕は、ペンを元の場所に戻しながら優しく尋ねる。
「これ。…2人は、1つ目から順番に見た方が分かりやすいかも」
僕に笑いかけたさくらは、全員に見えるようにと紙の向きを回転させた。
瞬間、彼女以外の全員が一斉にそれを覗き込む。
『1: 美味しいものをお腹いっぱい食べること
和田君、エマちゃん、大和君と韓国料理を食べた。ほっぺたが落ちるかと思った。チーズキンパ、最高!』
5月の時点で叶えられた願いを震える声で読み上げたエマが、ズズッと鼻を啜った。
「だからあの時、サクちゃん泣いてたんだ…!」
「あっ…」
彼女の言葉で思い出したのは、今まで記憶の片隅に追いやられていたあの日の出来事。
「一応やりたい事のうちの2つは叶ってるんだけど、今3つ目を思い付いたから書くね」
紙ナプキンの入った箱の横に取り付けられていたペンを拝借した彼女は、リストにとある文章を書き足す。
その手は一切の迷いもなく動いていて、彼女はずっと前からその言葉を書く事を決めていたのだろうと感じた。
「何て書いたの?」
彼女がペンを置いたタイミングを見計らった僕は、ペンを元の場所に戻しながら優しく尋ねる。
「これ。…2人は、1つ目から順番に見た方が分かりやすいかも」
僕に笑いかけたさくらは、全員に見えるようにと紙の向きを回転させた。
瞬間、彼女以外の全員が一斉にそれを覗き込む。
『1: 美味しいものをお腹いっぱい食べること
和田君、エマちゃん、大和君と韓国料理を食べた。ほっぺたが落ちるかと思った。チーズキンパ、最高!』
5月の時点で叶えられた願いを震える声で読み上げたエマが、ズズッと鼻を啜った。
「だからあの時、サクちゃん泣いてたんだ…!」
「あっ…」
彼女の言葉で思い出したのは、今まで記憶の片隅に追いやられていたあの日の出来事。