例えば今日、世界から春が消えても。
「あのね、私、エマちゃんとショッピングに行ってみたいの。あんまり遠出は出来なくなっちゃったから、高校の近くのショッピングモールに行きたい」


嬉しそうに夢を語り続ける彼女の左手は、僕の右手と絡み合ったままだ。


「それで、…私、モデルさんのエマちゃんの為に洋服を選んでみたいんだけど、良いかな?」


私は低身長だしスタイル良くないからさ、エマちゃんに似合いそうな服を見つけたいんだよね!

そう意気込むさくらの言葉は、またもやエマの涙腺を崩壊させてしまったようで。


「ああっ…もちろん、何着でも買う!何なら、モールの下にあるフードコートでアメリカンな食べ物一緒に食べよう、2人でアメリカ行った気分になろう…っ!」


紙ナプキンで目元を押さえたエマに向かってありがとう、と呟いたさくらは、続いて左斜め前を見据えた。


「それから、…私、大和君のサッカーの試合を見に行ってみたいんだよね」


将来有望な大和君がボール蹴ってる所、1回でいいから見てみたい。


彼女は無邪気な笑顔でそんな事を言うものだから、サッカーボールが恋人だと言い張っていた大和もさすがにノックアウトを食らったらしく。


「え、そりゃあもう…。次の試合は11月の中旬だけど、それでも良ければ、是非」


嬉しそうに坊主頭を掻きながら、阿吽の呼吸で了承していた。
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