例えば今日、世界から春が消えても。
自身は恋愛に興味はないと言い張っていたくせに、彼はにやにやと口元を緩ませながら勢い良く僕の肩にぶつかってきた。


「お前の事見てたら、バレバレなんだけど」


「いや、えっ?」


教室でもさくらと話す時は普通を心がけていたのに、どうして分かってしまったのだろうか。


目を白黒させる僕に、だって、と大和は勿体ぶりながら言葉を続ける。


「お前、飯野に出会ってから性格変わったと思う。よく笑うようになったし」


ちょこまかと進行方向を妨害してくる大和を避けながら歩いていた僕は、はたと足を止めた。


…確かに、言われてみればそうかもしれない。


今までの僕は死ぬ事しか考えていなくて、全てを俯瞰的に捉えて自分には関係ないと真っ向から決めつけていた。


でも、さくらは初めて会った初日から僕に明るく接してくれたから、笑顔になって、自主的に話す事が出来るようになったんだ。


「…そんで、どうすんの?」


完全に歩みを止めた僕の前に立ちはだかった大和が、ぬっと僕の顔を覗き込む。


「告んだろ?まさか、このまま偽物の彼氏で終わらせるわけじゃないよな」


「え、…」


大和の真剣な目は強い光を持っていて、怯みそうになる。


「…そりゃあ、告白したいけどさ、」
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