例えば今日、世界から春が消えても。
そう思ったのも束の間、
「っ、冬真くーん!」
今まで歩道橋の中間地点で立ち止まっていた彼女が小走りに端まで寄ってきて、手すりを掴んで僕の名を叫んだ。
最大限まで背伸びをして僕の所まで声が届くようにしているのだろう、柵の上にちょこんと見える顔が満面の笑顔を浮かべているのが見て取れる。
「私ねーっ、」
彼女の高くて澄んだ、風鈴のように美しい声が鼓膜を震わせる。
しかし、次の瞬間。
「え?」
彼女の笑顔が、見えなくなった。
一瞬何が起こったのか把握出来なくなった僕は、彼女が立っていた場所を凝視して、
「さくら!」
その場にしゃがみ込んでいる彼女の姿を捉えたんだ。
白血病が再発したから、そのせいで倒れたのかもしれない。
救急車、呼ばないと。
どうしよう、僕のせいだ。
今までに感じた事のない勢いで脈拍が速まったのを感じ、ひゅっと息を飲む。
僕はもつれる足を動かし、背中から汗が流れ出したのを感じながら3段飛ばしで階段を駆け上ってさくらの元へ駆け寄った。
「さくら、大丈夫!?」
俯いて手で顔を覆ったままの彼女の肩を掴んだ時、その肩が小刻みに震えているのが伝わってきて、僕は動きを止める。
「っ、…冬真く、…」
その掠れた泣き声を聞いて、中腰だった僕は腰が抜けてへなへなとその場に座り込んだ。
「っ、冬真くーん!」
今まで歩道橋の中間地点で立ち止まっていた彼女が小走りに端まで寄ってきて、手すりを掴んで僕の名を叫んだ。
最大限まで背伸びをして僕の所まで声が届くようにしているのだろう、柵の上にちょこんと見える顔が満面の笑顔を浮かべているのが見て取れる。
「私ねーっ、」
彼女の高くて澄んだ、風鈴のように美しい声が鼓膜を震わせる。
しかし、次の瞬間。
「え?」
彼女の笑顔が、見えなくなった。
一瞬何が起こったのか把握出来なくなった僕は、彼女が立っていた場所を凝視して、
「さくら!」
その場にしゃがみ込んでいる彼女の姿を捉えたんだ。
白血病が再発したから、そのせいで倒れたのかもしれない。
救急車、呼ばないと。
どうしよう、僕のせいだ。
今までに感じた事のない勢いで脈拍が速まったのを感じ、ひゅっと息を飲む。
僕はもつれる足を動かし、背中から汗が流れ出したのを感じながら3段飛ばしで階段を駆け上ってさくらの元へ駆け寄った。
「さくら、大丈夫!?」
俯いて手で顔を覆ったままの彼女の肩を掴んだ時、その肩が小刻みに震えているのが伝わってきて、僕は動きを止める。
「っ、…冬真く、…」
その掠れた泣き声を聞いて、中腰だった僕は腰が抜けてへなへなとその場に座り込んだ。