例えば今日、世界から春が消えても。
「見て、ハワイアンパンケーキ!ここにね、クリームがでーんって乗ってたの!もう美味しすぎて、ほっぺた落ちすぎて頬骨見えたかと思った」


後日、料理の写真を見せてくれたさくらが独特な表現を使いながらその感想を教えてくれたから、相当楽しんだ事が伝わってきて、こちらまで笑顔になれたんだ。


そして、有言実行したさくらはエマの為に洋服を選んだり、プリクラで写真を撮ったりしたらしい。


エマが撮っていた写真や動画には、長距離の移動は身体に障るからと車椅子に座ったさくらの様々な表情が収められていて、彼女が心からその日を楽しんだ事がありありと感じられた。



そこから数日後、大和が壇上で持ち前の一発ギャグを披露したものの、

「…あれ?」

予想通り大コケして赤っ恥をかいていた事は、言うまでもない。



そして、彼女の些細な願いの中で残っていた、『皆で沢山の写真を撮る』に関しては、わざわざやろうと努力する事はなかった。


何故なら、さくらを含めた僕達4人が、自然と彼女の生きる今この瞬間を思い出に残そうとしていたから。


さくらは今まで以上に周りの人々を写真に収めるようになり、僕達は逆に彼女の姿を撮り続けた。


毎日毎日、体調と相談しながらも学校に通い続ける彼女の余計な負担になりたくなかった僕は、自分からデートに誘う事は控えていた。
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