例えば今日、世界から春が消えても。
さくらの部屋にあるという絵をどうしても見たくなってしまった僕は、駄目元で、

『それならさ、クリスマスの日に、デートも兼ねてさくらの家に行っちゃ駄目かな?お家デートならさくらの負担も少ないだろうし、クリスマスプレゼントもケーキも持っていくから』

と、尋ねてしまったんだ。


家族で祝うクリスマスに彼氏を家に上げるなんて、きっと拒否されるはず。


そう考えていたのに、

『賛成。その日まで、絶対元気でいないとね』

彼女は当たり前のように、満面の笑みで承諾してくれた。


でもこれは口頭の約束だったし、てっきり時間と共に流れてしまうと思っていたけれど、

『冬真君!パパとママ、良いよって言ってくれた!』

『体調の事もあるから2時間だけだけど、私の部屋で楽しんでー、って!』

彼女の中ではこの約束は風化されていなかったようで、ありったけの喜びが感じられる文面は、僕が彼女の家に上がる事に対する許可を伝えていた。


もちろん、自室で独り寂しく夕飯を食べていた僕がベッドに飛び込んで静かにガッツポーズを決めていた事は言うまでもない。


そんなこんなで、さくらへのプレゼントとケーキと手土産、そしてもう1つの宝物を手にした僕は今、彼女の家の前に立っている。



どうしょう、今まで浮かれていて何も考えていなかったけれど、さくらのご両親はどんな人達なのだろう。
< 167 / 231 >

この作品をシェア

pagetop