例えば今日、世界から春が消えても。
でも、骨が浮いた鎖骨部分に煌めくそれは何処か残酷にも見えて。


「さくら、凄く綺麗だよ」


それでも、僕があげたネックレスを付ける彼女の姿が美しかった事に否定は出来なかった。


「本当?嬉しいな、もし入院することになってもずっと付けるからね。本当にありがとう、冬真君」


自分の首元に光る涙を触ったさくらは、心底嬉しそうに微笑んだ。



「私もね、プレゼントあるの」


次は、さくらの番だ。


正直に言って、叔母の家に引き取られてからサンタが家に来たこともなく、ずっと自室で食事を強いられていた僕にとって、これは物心が付いてから初めてのクリスマスプレゼントで。


そんな事など露程も思っていないであろう彼女は涙を拭き、枕の下から勿体ぶりつつ何かを取り出した。


「これ…アルバム?」


促されるままにそれを受け取った僕は、茶色の表紙に書かれた”冬真君へ”の文字と可愛らしいイラストを見て目を見開いた。


A5サイズの茶色のリングノートは、彼女の手が加えられたおかげでずっしりと重たくて。


「そうだよ。冬真君との写真と今までの思い出、全部入ってるから。最後には、私の“死ぬまでにやりたいことリスト”も入れておいた」


にこにこと花を咲かせたさくらは、細い指でアルバムを指し示す。


「開いてみて。自信作だから」


「うん」
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