例えば今日、世界から春が消えても。
遊園地の次は水族館、海、映画館でのデート風景。

2人のツーショットもあれば僕やさくらのピンショットもあるし、行った場所や雲の写真なんかも貼られている。


アルバムの中盤からは、エマや大和の映る写真も目立つようになった。


エマ達がふざけて笑っているところを僕が見物している場面や、定期試験前の勉強会で大和が爆睡している瞬間。

学校の外観、誰も居なくなった教室、僕達の関係が始まった思い出の歩道橋の写真。

僕の後ろ姿、カメラ目線で照れ臭そうに笑う姿。

僕の席に座っておちゃらけたポーズを取ったり、黒板に落書きをして楽しむさくら。

エマ達に半分騙されて着いて行ったカフェで撮った食べ物の写真や、つい先月行われたばかりのサッカーの試合で撮影した1枚まで。


そのアルバムには、僕達が過ごしてきた些細な1日から記憶に残る大切な日に至る全てが収められていた。



「…ありがとう、」


ああ駄目だ、泣いてしまいそうだよ。


こんな手の込んだプレゼントを貰ったのは初めてで、何か格好良い言葉を言いたいのに、口を開いたら涙が溢れてしまいそうで。


最後のページに手作りと思われる小さな封筒が貼られ、その上に“死ぬまでにやりたいことリスト”と書かれているのを発見した僕は堪らずに俯いた。


せめて、彼女の前では頼り甲斐のある彼氏になりたかったのに。
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