例えば今日、世界から春が消えても。
それは、春が戻って来る事に対する嬉しさと、
神の意地悪のせいで運命を狂わされた大切な人を、自らの手で助けられないと悟った強い悲しみ。
「っ、」
ただその場で動きを止める僕と、唇を噛み締めながら窓の方を見て溢れそうになる感情を我慢するエマ。
「お前ら!ニュース見た!?」
その時、エマと同じ報道を視聴していたらしい大和が息せき切って僕達の方に走ってきたけれど、彼は僕達の様子を見て全てを把握したらしく、それ以上言葉を発する事はなくて。
空気を読んだ彼に心の中で感謝しながら、僕は今は誰も座っていない隣の席に目を向ける。
『冬真君、こっち向いて!』
何もないはずの空間に、こちらに向かって笑顔でスマホのレンズを向けるさくらの姿が見えた気がした。
──────────……
「…お邪魔します」
放課後。
元々何の予定も入っていなかった僕は、電車で数駅隣にある大きな大学病院を訪れていた。
もちろん、此処に来た目的は今朝仕入れたニュースについて彼女に報告する為。
あの後、殆どのクラスメイトが朝のHRが始まる前にその報道を耳に入れ、そこら中で“桜”や“春”といった言葉が飛び交う光景が見受けられた。
SNSのトレンドには春に関連する言葉がランクインし、幻と化した季節に日本国民が大いに関心を示している事は一目瞭然で。
神の意地悪のせいで運命を狂わされた大切な人を、自らの手で助けられないと悟った強い悲しみ。
「っ、」
ただその場で動きを止める僕と、唇を噛み締めながら窓の方を見て溢れそうになる感情を我慢するエマ。
「お前ら!ニュース見た!?」
その時、エマと同じ報道を視聴していたらしい大和が息せき切って僕達の方に走ってきたけれど、彼は僕達の様子を見て全てを把握したらしく、それ以上言葉を発する事はなくて。
空気を読んだ彼に心の中で感謝しながら、僕は今は誰も座っていない隣の席に目を向ける。
『冬真君、こっち向いて!』
何もないはずの空間に、こちらに向かって笑顔でスマホのレンズを向けるさくらの姿が見えた気がした。
──────────……
「…お邪魔します」
放課後。
元々何の予定も入っていなかった僕は、電車で数駅隣にある大きな大学病院を訪れていた。
もちろん、此処に来た目的は今朝仕入れたニュースについて彼女に報告する為。
あの後、殆どのクラスメイトが朝のHRが始まる前にその報道を耳に入れ、そこら中で“桜”や“春”といった言葉が飛び交う光景が見受けられた。
SNSのトレンドには春に関連する言葉がランクインし、幻と化した季節に日本国民が大いに関心を示している事は一目瞭然で。