例えば今日、世界から春が消えても。
2人に挟まれる形で座っていた僕は静かに頷き、

「…そういえば」

両手で抱えていたアルバムを彼らに見せた。


「さくらが僕に、アルバム作ってくれたんだけどさ。…“死ぬまでにやりたいことリスト”も一緒に貰ったから、さくらのやりたい事が本当に叶ったか、見てみない?」


話していないと、心が折れて潰れてしまいそうだった。


僕の提案に掠れた声で同意したエマと大和が、両脇からアルバムを覗き込む。


「これなんだけど」


1番最後のページを開には大きな封筒が貼られ、その上には“死ぬまでにやりたいことリスト”と書かれている。


さくらが、

『見るのは私が死んだ後。良い?』

と言っていたリスト。


彼女は、自らのやりたいことを追加したのだろうか。


エマが早くも涙を拭い始めた事に気付きつつ、ゆっくりと封筒を開ける。


中から慎重に紙を取り出した僕は、2人にも見えるようにしてそれを掲げた。


『1: 美味しいものをお腹いっぱい食べること』

『2: 嘘でもいいから彼氏を作る。デートをする』


何度も見てきた2つの願いの下に書かれた感想は、さくらが確かに僕達と時を共にした事を示していて。
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