例えば今日、世界から春が消えても。
『3: 大切な友達と、忘れられない思い出を作る

エマちゃんとショッピングに行った。一緒にプリクラ撮って、ワンピースを選んであげた。本当に似合ってた!
大和君のサッカーの試合を見に行った。途中で具合が悪くなったけど、大和君がシュートを決める瞬間を見れた。誰よりも輝いていて、感動した!』


3つ目のやりたいことには、すぐ下にさくら自身の感想が書かれていた。


「っ、……!」


両脇から、僕の大切な友達が嗚咽を堪えて泣き始めたのが分かる。


僕も涙目になりながらその紙を畳もうとして、

「…あれ?」

3つ目のやりたいことの感想の下に書かれた、4という数字に目を見開いた。


「4つ目が、ある」


自分の声は、想像以上に震えていて。


「…何て書かれてる?」


大和の質問に答えようと、彼女が記した4つ目のやりたいことの内容を目で追い掛けた僕は、


「っ…さくらっ……、!」


その文を読みあげる事すら叶わず、俯いて嗚咽を漏らした。


枯れ果てたと思っていた涙はいとも容易く僕の頬を濡らし、ジーンズに小さな丸い染みを作っていく。


「フユちゃん…、!」


僕の手に握り締められた“やりたいこと”を目にしたのか、エマまでもが肩を震わせて泣き始めたのが伝わる。



さくら。

君は、誰よりも優しくて美しい女性だよ。



周りの目も気にせずに泣き続けながら、僕は心の中で愛しい彼女に話し掛ける。





彼女の書いた4つ目のやりたいことは、


『4: 冬真君と最後まで生き抜く』


だったんだ。


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