例えば今日、世界から春が消えても。
その帰り道の事だった。


居眠り運転をしていたトラックと、僕達が乗っていた軽自動車は正面衝突する大事故を起こしたんだ。


『…とう、ま…──────』


何が起こったのか把握出来ない間に車体が大きく揺れ、シートベルトは外れて。


粉々に砕け散った窓ガラスの外に放り出されそうになった僕を、隣に座っていた母が力の限りに抱き締めてくれた事は何となく覚えている。


運転していた父はうんともすんとも言わず、母は普通なら考えられない体勢で僕の身を庇い、

そのまま、2人は息絶えた。



僕は奇跡的に命に別状はなかったものの、全身打撲の他、窓の外に放り出されかけた際に車のガラスで右手首から肘にかけてをぱっくり割る大怪我をした。


ここからは親戚が教えてくれた事だけれど、僕の腕の傷は深過ぎたせいで骨まで見えており、最悪の場合は右腕が動かなくなると宣告まで受けたそうだ。


でも、医者の心配もよそに、僕の身体は半年も経たないうちに回復した。


僕の入院中に両親の火葬は済まされ、孤児となった僕を誰が引き取るかで親族は大いに揉めたらしい。


そんな中、唯一僕と歳の近い子供が居る、母の姉ーつまり叔母ーが、僕を育てる事に決まったのだけれど。


叔母は元からその気では無かったらしく、今ではこんな扱いを受けている。


早く家を出れば良い話だけれど、お金もかかるしそう簡単に事は運ばない。
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