例えば今日、世界から春が消えても。
朝のHR前の時間、僕の右隣では普段と同じように飯野さんとエマが女子トークに花を咲かせている。
「ねえ、俺にもその写真見せて」
僕の前の席にはサッカーボールを手にした大和が座り、たまに彼女達の話題に入っていて。
けれど、いつもなら静かに話を聞いているはずの僕は、完全に外界との交信を遮断して自分の殻の中に閉じ籠っていた。
あの日以降、僕と飯野さんは口を利いていない。
元から口数が少なかった僕は自分から彼女に話し掛ける事はあまり無かったけれど、今では、彼女が僕に話し掛ける事も無くなっていた。
僕達は隣の席同士だから、どうしてもギスギスした雰囲気は他の生徒も勘づいてしまうようで。
エマも大和も僕達の間に何かあった事は察しているものの、それについて聞き出す事も、僕を無理やり会話の中に引き摺り込む事もしなかった。
分かっているんだ、これは僕の心無い行動がもたらした結果だと。
あの時、もっと良い反応を取れていれば、せめて彼女の言う余命に関して何らかの反応を取っていれば、こんなに拗れた関係性にはならなかったと。
それなのに僕が重視して感情的になってしまったのは、彼女が“春を盗んだ”という絵空事みたいな部分で。
この数日間、僕は自室でずっとその事について考えを巡らせていた。
「ねえ、俺にもその写真見せて」
僕の前の席にはサッカーボールを手にした大和が座り、たまに彼女達の話題に入っていて。
けれど、いつもなら静かに話を聞いているはずの僕は、完全に外界との交信を遮断して自分の殻の中に閉じ籠っていた。
あの日以降、僕と飯野さんは口を利いていない。
元から口数が少なかった僕は自分から彼女に話し掛ける事はあまり無かったけれど、今では、彼女が僕に話し掛ける事も無くなっていた。
僕達は隣の席同士だから、どうしてもギスギスした雰囲気は他の生徒も勘づいてしまうようで。
エマも大和も僕達の間に何かあった事は察しているものの、それについて聞き出す事も、僕を無理やり会話の中に引き摺り込む事もしなかった。
分かっているんだ、これは僕の心無い行動がもたらした結果だと。
あの時、もっと良い反応を取れていれば、せめて彼女の言う余命に関して何らかの反応を取っていれば、こんなに拗れた関係性にはならなかったと。
それなのに僕が重視して感情的になってしまったのは、彼女が“春を盗んだ”という絵空事みたいな部分で。
この数日間、僕は自室でずっとその事について考えを巡らせていた。