例えば今日、世界から春が消えても。
僕が和田家に引き取られると決まった時、それに対して1番難癖を付けていたのは遥だった。
多分、彼女は幼心に、僕が新たな家族の一員になる事で両親は自分に構ってくれなくなるとでも考えたのかもしれない。
その思考回路は歳を重ねる事に複雑化し、今では彼女は僕を本気で嫌っている。
叔母はまだ僕と必要最低限の会話をしてくれるし、叔父も僕が話し掛けたら答えてくれる。
でも、彼女に至ってはまともに会話が続く事もなかった。
『…何で?』
だからその時の僕は、遥が自分から僕に話しかけた事に対して少しの嬉しさを滲ませながら口を開いたんだ。
でも、彼女の答えは、
『明日は彼氏を家に連れて来るから、あんたが居るって知られたくないの。出来れば夜まで帰って来ないで』
分かっていても、それでも、僕にとってはやっぱり残酷なものだった。
だから僕は今朝、姉が寝ている時間に起床して、眠い目を擦りながら準備をして朝食も食べずに家を出た。
さくらとの予定が入っていた事だけが、唯一の救いだった。
「高校生2人分で。…はい。お願いします」
いつの間にか僕達の順番になっていたらしく、さくらが受付の人に説明する声を聞いた僕は、はっと我に返った。
「チケット取れたよ、冬真君!」
多分、彼女は幼心に、僕が新たな家族の一員になる事で両親は自分に構ってくれなくなるとでも考えたのかもしれない。
その思考回路は歳を重ねる事に複雑化し、今では彼女は僕を本気で嫌っている。
叔母はまだ僕と必要最低限の会話をしてくれるし、叔父も僕が話し掛けたら答えてくれる。
でも、彼女に至ってはまともに会話が続く事もなかった。
『…何で?』
だからその時の僕は、遥が自分から僕に話しかけた事に対して少しの嬉しさを滲ませながら口を開いたんだ。
でも、彼女の答えは、
『明日は彼氏を家に連れて来るから、あんたが居るって知られたくないの。出来れば夜まで帰って来ないで』
分かっていても、それでも、僕にとってはやっぱり残酷なものだった。
だから僕は今朝、姉が寝ている時間に起床して、眠い目を擦りながら準備をして朝食も食べずに家を出た。
さくらとの予定が入っていた事だけが、唯一の救いだった。
「高校生2人分で。…はい。お願いします」
いつの間にか僕達の順番になっていたらしく、さくらが受付の人に説明する声を聞いた僕は、はっと我に返った。
「チケット取れたよ、冬真君!」