例えば今日、世界から春が消えても。
言われるがまま、彼女に右手を握られる。

今日だけは右腕が痛まないで欲しいと、強く願った。


「せーのっ、入場ー!」



手を繋いでゲートの先に出た僕達は、暖かな陽射しに包まれた。


あははっ、すっごく楽しい!


遊園地にいるどの子供よりもこの瞬間を楽しみ、幸せを爆発させている彼女の横に居るのが僕で本当に良いのか、未だに自信はないけれど。


彼女のその姿を見るだけで、胸の鼓動が高鳴った気がした。




「あーやばい、…何あの乗り物…地獄…」


「同感」


それから3時間程、僕達は様々な乗り物に乗って初デートを楽しんだ。


怖いもの知らずな彼女は果敢にお化け屋敷に挑んだものの、中では弱虫な一面を見せて、

「無理進めない無理、いやあああ駄目って言った!」

と、訳の分からない事を言いながら僕にしがみついてくるし。


先程乗った園内最大のジェットコースターでは、

「ねえ見て、景色綺麗だね…あ、待って待って無理落ちる!無理いいぃああああ!」

と、真っ青な顔で景色を堪能した挙句、ジェットコースターが止まるまで絶叫し続けていた。


そして先程コーヒーカップに乗った僕達は、さくらの無茶ぶりでハンドルを限界近くまで回した結果、フラフラした足取りでベンチに座り込んだところなんだ。



「ちょっと、午前中から飛ばし過ぎたかな…」


「絶対そうだよ。一旦、休憩しよう…」
< 78 / 231 >

この作品をシェア

pagetop