例えば今日、世界から春が消えても。
「夏休みさ、部活で日焼けしすぎてこの辺皮剥けてるんだけど。ほら」


「知ってるから見せてこないで」


2学期の始業式、僕と大和、そしてエマは1ヶ月半ぶりに顔を合わせた。


大和はサッカー部の練習に明け暮れていたようで、僕の前の机に座りながら真っ黒に日焼けした肌をこれ見よがしに自慢してくる。


そんなスポーツ馬鹿を見て頭を抱えたエマは、

「それにしても、サクちゃん遅いね。いつもならフユちゃんよりも早く学校に来るのに」

窓枠にある手すりに背中をもたれかけ、不思議そうに呟いた。


「そうだね」


彼女に同意の言葉を投げ掛けつつ、僕も頬杖をついて窓の外を眺める。



8月から秋になったとはいえ、まだまだ陽射しは強い。


さくらは背が他の人よりも低いから比較的見分けがつきやすいのに、校庭を横切る生徒の中からは彼女の姿を見つける事は出来なかった。



そして、二言三言言葉を交わした直後。


「あと5分でHR始まっちゃう。私、サクちゃんに連絡してみる」


落ちつかなげに時計の方をチラチラと見ていたエマが、遂にスマホを取り出した。


「休みの間に睡眠サイクルおかしくなって、まだ寝てるだけじゃん?なあ?」


それに対し、いちいち心配しすぎなんだよ、と呟いた大和が僕に同意を求めてくる。
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