あなたの妻になりたい
「キゥキゥ」
 子竜が二回鳴くときは、いいよと言っているとき。と、マイリスは勝手にそう思っている。

「どんな名前がいいかしら……。ランちゃん、でもいい?」
「キゥキゥ」
「うふふ。ランちゃん。あなた、かわいいわね」

 ランちゃん。
 それはもちろんランバルトからとったもの。ランバルトに向かって「ランちゃん」なんて呼んだら、恐らくあの目を吊り上げて「やめろ」と言ってくるだろう。だから、子竜に向かって「ランちゃん」と呼ぶのだ。

「ランちゃんは、私のことを知っているの?」
「キゥキゥ」
「私ね。バルコニーから、夕焼けを見るのが好きなの。たまに飛竜が飛んでいるのよ。それを見ているだけで、なんか、ここに来て良かったなって思えるの。でも、いつもね。私の夫がね、早く部屋に入るようにって言ってきて、邪魔をするのよ」
「キゥ」
「一緒に夕焼けを見ましょう、と言っても、彼は一人で部屋に戻ってしまうの」
 そこでマイリスは飛竜をぐっと抱きしめる。

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