あなたの妻になりたい
マイリスは次第に紫色に染まっていく空を見つめながら、小さく息を吐いた。彼女はこのプレトニバ王国の者ではない。ここから南にあるトロナ小国の第二王女であった。
トロナ小国は島国で閉鎖的な国。だからこそ、この大国であるプレトニバ王国と繋がりを持つことができるということは、トロナ小国の発展につながるとして、父親であるトロナ国王は大変喜んだ。
そもそもこの縁談がトロナ小国へと舞い込んできたとき、誰よりも驚いたのはマイリスの父親であるトロナ国王だった。なぜ、あの大国の王太子がマイリスを妻にと指名してきたのか、何度も何度も首を傾げていた。それでも大国と繋がりを持つことができるという喜びと期待の方が大きかったのも事実。それにあの大国の王太子の妻となれば、マイリスも不自由はしないだろうという、娘を思う気持ちもあった。
さらにトロナ国王は思い出す。今から十年以上も前に、プレトニバ国王がこの小国を訪れたことがあったということを。だから、きっとそのときの縁だろうと、彼は勝手にそう思っていた。
マイリスはトロナ小国の未来を背負ってこのプレトニバに嫁いできたわけだが、彼との間に仮婚と呼ばれる期間があることを知らなかったし、この期間中に子を授からなければ、他の男性の元に嫁ぐようになるということも知らなかった。勉強不足と言われればそれまでなのだが、閉鎖的な島国の小国が、この大国のこういった独特な習慣を知ることは難しいことでもあった。
そもそも書物に書かれていることでもないらしい。口頭でのみ伝えられている伝承のようなものだ、と、マイリスがこの国にきた日にランバルトから教えられた。
初めて耳にしたその事実に、身体の震えが止まらなかったことを覚えている。それは、二年後には彼と別れて他の男の元に嫁ぐかもしれない、という可能性も秘めていたから。だからこそ、この二年の間に彼との間に子を授かりたいと、強く望んだ。
トロナ小国は島国で閉鎖的な国。だからこそ、この大国であるプレトニバ王国と繋がりを持つことができるということは、トロナ小国の発展につながるとして、父親であるトロナ国王は大変喜んだ。
そもそもこの縁談がトロナ小国へと舞い込んできたとき、誰よりも驚いたのはマイリスの父親であるトロナ国王だった。なぜ、あの大国の王太子がマイリスを妻にと指名してきたのか、何度も何度も首を傾げていた。それでも大国と繋がりを持つことができるという喜びと期待の方が大きかったのも事実。それにあの大国の王太子の妻となれば、マイリスも不自由はしないだろうという、娘を思う気持ちもあった。
さらにトロナ国王は思い出す。今から十年以上も前に、プレトニバ国王がこの小国を訪れたことがあったということを。だから、きっとそのときの縁だろうと、彼は勝手にそう思っていた。
マイリスはトロナ小国の未来を背負ってこのプレトニバに嫁いできたわけだが、彼との間に仮婚と呼ばれる期間があることを知らなかったし、この期間中に子を授からなければ、他の男性の元に嫁ぐようになるということも知らなかった。勉強不足と言われればそれまでなのだが、閉鎖的な島国の小国が、この大国のこういった独特な習慣を知ることは難しいことでもあった。
そもそも書物に書かれていることでもないらしい。口頭でのみ伝えられている伝承のようなものだ、と、マイリスがこの国にきた日にランバルトから教えられた。
初めて耳にしたその事実に、身体の震えが止まらなかったことを覚えている。それは、二年後には彼と別れて他の男の元に嫁ぐかもしれない、という可能性も秘めていたから。だからこそ、この二年の間に彼との間に子を授かりたいと、強く望んだ。