あなたの妻になりたい
恐らく母親はマイリスがこうなることをわかっていたのだろう。そもそもプレトニバ王国にトロナ小国から嫁ぐということがおかしい話なのだ。プレトニバにとってトロナ小国なんて、政治的に利用できる価値もあるとも思えない。
だからこそ彼から愛されたいと思うのは贅沢な願いというもの。
ランバルトの部屋の扉の前に立ち、マイリスはきゅっと唇を噛みしめた。トントントンと控えめに扉を叩く。
「ランバルト様。マイリスです」
「どうぞ」
このようにマイリスが毎夜、彼の部屋を訪れても彼は拒まない。
ランバルトの部屋はいつ来ても落ち着いた空気が漂っていた。そんな空気の中、彼は寝台の脇にあるソファにゆったりと座って、何やら本を読んでいた。よく見ると、ソファの前に置いてある小さなテーブルには、本が三冊ほど積み上がっていた。
別にこれは今に始まったわけでもない。彼女がこの時間にここを訪れることをわかっているはずなのに、彼はこうやって本を読んでいるのだ。
その本は、この国の歴史の本であったり、会計学であったり、心理学であったりと、本のジャンルも様々なもの。これからこの国を支えていく国王の地位につく彼にとって必要な知識であることはわかっているのだが、それでもマイリスは寂しいと思ってしまう。
そう思ってしまう理由は、彼の視線が本から逸れることがないから。部屋を訪れたマイリスに、一度も視線を向けてくれないから。
だからこそ彼から愛されたいと思うのは贅沢な願いというもの。
ランバルトの部屋の扉の前に立ち、マイリスはきゅっと唇を噛みしめた。トントントンと控えめに扉を叩く。
「ランバルト様。マイリスです」
「どうぞ」
このようにマイリスが毎夜、彼の部屋を訪れても彼は拒まない。
ランバルトの部屋はいつ来ても落ち着いた空気が漂っていた。そんな空気の中、彼は寝台の脇にあるソファにゆったりと座って、何やら本を読んでいた。よく見ると、ソファの前に置いてある小さなテーブルには、本が三冊ほど積み上がっていた。
別にこれは今に始まったわけでもない。彼女がこの時間にここを訪れることをわかっているはずなのに、彼はこうやって本を読んでいるのだ。
その本は、この国の歴史の本であったり、会計学であったり、心理学であったりと、本のジャンルも様々なもの。これからこの国を支えていく国王の地位につく彼にとって必要な知識であることはわかっているのだが、それでもマイリスは寂しいと思ってしまう。
そう思ってしまう理由は、彼の視線が本から逸れることがないから。部屋を訪れたマイリスに、一度も視線を向けてくれないから。