夜と遊ぶ

「あ、私、一夜にクリスマスプレゼントあるの」


「え、嘘?本当に?」


今夜はこのホテルで待ち合わせだったので、
その道中に買いに行って来た。


それにしても、目の前の一夜が凄く目をキラキラとさせていて、
期待され過ぎても…と思ってしまう。



「たいしたものじゃないのだけど…」


横の椅子に置いていた鞄から、その紙袋を取り出す。


「なんだろう?」


一夜は私からその紙袋を受け取り、中から箱を取り出しその包装をほどく。


なんだか、それを見ていて私の方がドキドキとしてしまう。


「へぇ、眼鏡」


一夜は、私があげたBALENCIAGAのべっこう柄のフレームの眼鏡を手に取っている。

その表情が明るくて、ホッとした。


「一夜、伊達眼鏡だし、赤い眼鏡持ってるからいらないかもしれないけど」


「ううん。凄く嬉しい。
俺、この眼鏡きっと凄く似合っちゃうと思う」


そう言って、一夜はべっこう柄の眼鏡を掛けてくれた。


一夜に似合いそうだな、と思って選んだのだけど、思っていたよりも似合っていて、
格好いいな、とにやけてしまう。



「実は、俺もあるんだよね」


「え?嘘?」


このホテルの部屋や食事がクリスマスプレゼントだと思っていたので、本気で驚いた。


一夜は、隣の椅子に置いていた自分のスーツの上着を手に取り、その内ポケットから、包装された長細い箱を取り出した。


私は、それを受け取る。


箱の形状から、指輪やイヤリングとかではないのが分かるのもそうだけど、
包装紙に刻まれたMONTBLANCの文字で、なんとなく中身に想像が付いた。


包装を解き、開けた箱に入っているのは、朱色のボールペン。


「綺麗」


それが、率直な感想。


持ち手が朱色で、半分がシャンパンゴールドで星柄が散らばっている。


< 109 / 215 >

この作品をシェア

pagetop