夜と遊ぶ




此処に戻る気満々だったのか…。


そのラブホテルの場所も部屋番号もしっかりと覚えていた、私。



707号室のチャイムを押すと、


「おかえりなさい」


と、加賀見一夜が扉を開いて私を出迎えてくれる。


先程迄していた眼鏡は掛けていないから、変装の為だけの伊達眼鏡なのかな?



彼の背を追い部屋の中に入ると、
ベッド脇にあるテーブルに、ホールケーキがドーンと置いてある事に気付いた。


そのケーキは生クリーム系で色々なフルーツが載っている。

色々なフルーツなのだけど、メインはメロン。


「この辺り、夜の店ばかりだから、こうやってド派手なケーキしか売ってなかったけど」


「あの、もしかして、それって私に…」


もしかしたら、この人がケーキが食べたくて、買って来ただけなのかもしれないけど。


「そう。バースデーケーキ」


そう言われ見ると、チョコレートのプレートに何か書いてある。



"mako&ichiya
Happy Birthday"


それが筆記体だったのもそうだけど、少し文字が潰れていてよく見ないと気付かなかった。


まこ…いちや…。


「私の名前だけじゃなく、あなたの名前もある」


「うん。俺も今日が誕生日…って言うとややこしいね。
真湖ちゃんが10月5日で俺が6日。
なんと、俺達誕生日が1日違いなんだよ」


「それは…凄いのかな?
お誕生日おめでとう。
日付が変わっているから、もうあなたの誕生日だね?」


「ありがとう。
ケーキ食べない?
せっかく買って来たし…って言っても、
すぐそこの店なんだけど」



そういえば、このホテルの斜め向かいにケーキ屋さんがあった。


夜のお店が多いから、こんな深夜でもやっているんだな。



「あ、さっきホテルの奴に皿とフォークは持って来させたんだけど。
ナイフないから、切れないな」


「もう、そのまま食べちゃえば?
私、これくらいならペロリと食べれる」


テーブルの上の、皿の上に置かれているフォークを手に取る。


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