夜と遊ぶ

「いっちゃん、本当に真湖ちゃんの事が好きなんだろうね」

そう、一枝さんは何処か嬉しそうに笑っていて、
それで私のこの人に対する気まずさが薄れた。


「そうなのですかね…」


それを分かっていても、曖昧に笑って誤魔化した。


「いっちゃんって、昔から本当に分かりやすいから。
あんなにも嬉しそうないっちゃん見たの、初めてかもしれない」


そこまで言われると、照れてしまう。


「そうですか。なら良かったです」


「きっと、真湖ちゃんと居るといっちゃんは自然体でいられるんだろうね。
普段、無理してるから」


そう言われ、普段の一夜は無理しているのだろうか?と考えた。


いつかの焼肉屋での一夜は、無理していたのだろうか。


あの時の一夜は、私が知ってる中で一番ヤクザの顔をしていた。


「だから、もしもこの先真湖ちゃんを失った時、いっちゃんどうなるんだろ」


一枝さんの顔から、スッと表情が消えて。


やはり、私はこの人が苦手だと思った。


一夜は缶ビールを沢山抱えて、部屋に戻って来た。


「今日は、パーと盛り上がろう」


一夜は、テーブルに置いた缶ビールのプルトップを1つ開ける。


一枝さんも、手前からビールの缶を1つ手に取り、プルトップを開けた。


「そうだね。
クリスマスだからね」


二人は、ビールが飛び散るくらい強く乾杯すると、アハハと笑っている。


本当に、この二人が仲良しなのは分かるのだけど。


見ていて、胸がざわざわとする。

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