夜と遊ぶ
約束をしていたように、
年が明ける直前に、一夜は私に会いに来てくれた。


自宅のマンションの近くに止まった、早瀬さんの車に近付く。


今夜は大晦日だからか、この時間でも歩道に人通りも多い。


みんな駅の方に向かって歩いていて、初詣に行くのだろうな。


私の姿を見付けた一夜が、その車の後部席から降りて来る。


「真湖ちゃん。着いたら連絡するから、それから出てきてって言ったのに。
夜は危ないから」


「大丈夫だよ」


一夜の方へと歩いて行くと、一夜は降りたばかりの後部席に私の手を引いて、乗り込む。


「こんばんは」


運転席の早瀬さんにそう挨拶をすると、こちらを振り向き笑って、お久しぶりです、と挨拶を返してくれた。



そういえば、早瀬さんは、一夜以上に久しぶりだな。

前に会ったのは、クリスマスよりももっと前。


今夜は護衛の人達は居ないのかな?と思ったけど、
少し離れた所に彼らが乗っていると思われる2台の黒いミニバンが停まっている。



「一夜、会いたかった」

ほんの数日会えなかっただけなのに、会えた喜びで胸が苦しくなる。


昌也に対しては、こんな気持ちになった事なんてなかった。


「俺も真湖ちゃんに会いたくて、たまんなかった」


そう笑う一夜は、ほんの少し疲れた表情をしている。


連日の飲み会で、お疲れなのか。


その疲れた表情も、色気があって好きだな。


「一夜キャバクラばかりだし、昨日は昨日であんないかがわしいお店に行って、私、怒ってるんだから」

そう言うと、アハハ、と笑っている。


「あ、一夜、髪の毛切った?」


ほんの少し、短くなっている。


「昨日、切った。よく気付いたね?」


「そりゃあ、一夜の事だから」


車の中は暗くてよく見えないから分からないけど、カラーとかもしているかも。


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