夜と遊ぶ
「マジ?
何?彼氏の浮気知って、自棄食い?」
そう言われ、先程の事を思い出す。
私のものではない、女性物の靴…。
考えないようにしていたのに。
「あなたのせいなんだから、責任取って、このケーキの半分食べて?」
この人がけしかけなければ、
私は昌也の浮気を知らずにすんだのに。
しかも誕生日に(正確には次の日だけど)。
でも、やっぱりな、と、ハッキリとしてスッキリとしたような気持ちもある。
「はいはーい。
後、俺、ケーキにロウが垂れるの嫌だから、ロウソクは貰ってないけど。
真湖ちゃん、ロウソクをふぅーとかしたかった?」
「それはべつに」
「そう」
会話が途切れると同時に目が合い、
なんだか気まずくて目線を逸らす。
「にしても、真湖ちゃんは律儀に此処に戻って来て、偉いよね?
バッくれても良かったのに」
「そんな事したら、ケーキが無駄になってたよ?」
この人も食べるなら、全くの無駄にはならないのだろうけど。
けど、初めからそのつもりなら、そう言ってくれればいいのに。
こんなケーキ用意されてビックリしたのもそうだけど。
嬉しくて、ちょっと泣いてしまいそう。
「私、お礼が言いたかった。
もし、あなたが私を拾ってくれなかったら、もっと悪い人達に何処かに連れて行かれていたかもしれない」
先程、少しこの辺りを歩いたけど。
けっこう怖かったから。
「俺より、もっと悪い人、ね」
そう、私の言葉にクスクスと笑っている。
「あなたは悪い人かもしれないけど、
少なくとも今夜は違う。
だって、此処に私に戻って来いって言ったのも、こうやって私の誕生日を祝ってくれるつもりだったんでしょ?」
それなりに、この人にも下心はあるかもしれないけど。