夜と遊ぶ
「俺はともかく、ナガやんの事はそんな風に言ってあげないで。
俺がそのドラクエのセーブデータ消してジュニアが泣いてるから、
ナガやん、3日間寝る間も惜しんで初めから同じ所迄進めてくれただろ?」


お前ら、は、一夜だけじゃなく、永倉ジュニアのお兄さんの一枝さんの事もか。


「べつに、俺は泣いてねえし」


「あ、そうか。
お前が何日も掛かったのを、ナガやんはそうやって最速で進めて。
お前よりも、レベルも職業も良いものにしてくれて。
そうやって、お前の兄貴は何をやってもお前よりも優れていて。
もしかして、ナガやんがウザイ理由は、それ?」


一夜は鼻で笑い、永倉ジュニアを睨み付けている。


永倉ジュニアは、悔しそうにそんな一夜を睨み返している。


「とにかく、もう真湖ちゃんに近付かないで?
次近付いたら、お前のあの女、ドラクエのセーブデータみたいに、消しちゃうよ?」

「…は、あの女って、誰だ?」


そう訊く永倉ジュニアが動揺しているのが、分かる。



「お前が自分の名前付けて、店で働かしてた女。
けど、ウケんな。
源氏名が、フタバって」


「ちょっと情報が古いんじゃないですか?
あの女とは、もう俺は関係ない」


永倉ジュニアがそう言い終えると同時くらいに、
一夜は永倉ジュニアに近付き耳打するように口を開いた。


「お前ら親子が内密に仲良くしているどっかの社長の息子に、お前の女、押し付けたんだろ?
それをナガやんに聞いたのちょっと前だから、また状況は変わってんのかな?」


そう、二人の近くに居る私には、微かに聞こえて来た。


この話を周りの人間に聞かせないように、
一夜はそうやってこそこそと話したのだろう。


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