夜と遊ぶ
「うっせぇ。べつに、あんな女なんかどうなっても俺には関係ない!」


一夜を、永倉ジュニアは振り払い、私を睨み付けて来る。


「それよりも、この女…。
加賀見会長も知ってるんでしょ?
この女の父親が警察官なのを」


永倉ジュニアのその言葉に、息を飲む。


恐る恐る、一夜の顔を見た。


「知ってる。
真湖ちゃんのお父さんが、警察官なの」


私のお父さんが警察官なのを、一夜は知っていたんだ。



「付き合っていたら、そんな話くらいするよ」


私はこの人に、それを話した事はないのに。


「べつに、俺がヤクザでも警察官の娘と付き合ってもよくない?
ナガやんだって、昔、警察官の娘と付き合っていたし。
まあ、ナガやんは親がヤクザで、俺とはまた違うけど」


「べつに、警察官だからどうこう言ってんじゃねぇ!
この女の父親は――」


「聖王会の事を、嗅ぎ回っていたね」


永倉ジュニアの言葉を遮り、一夜がそう口にした。


私のお父さんが、聖王会をって、なんで?


「ジュニア、とにかくもう消えろ」


「けど」


「いいから」


一夜がそう言うと、永倉ジュニアは私をもう一度睨み付けて、ベンツの方へと歩いて行く。


永倉ジュニアを乗せたベンツが居なくなる迄、一夜と私は黙ったまま、ただそれを見ていた。



「一夜、私のお父さんの事…」


一体、何から訊けばいいのか分からない。


もしかして、私のお父さんが居なくなった事と、一夜というか、聖王会は何か関わりがあるの?


「ねぇ、俺の部屋から車のキー取って来て?」


一夜は、護衛の一人に近付きそう声を掛けている。


「早瀬には俺から言うから、お前らは俺から離れていて」


「いや、ですが…」


「俺がそうしろ、って言ってんだよ」


一夜のその声は、いつも聞いているよりも低くて。


護衛の人は、分かりました、と口にした。


「真湖ちゃん、ドライブに行こっか?」


そう明るく言われるけど。

きっと、ドライブは口実で、二人で話そうという事だろう。


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