夜と遊ぶ
暫く車を走らせていたが、港のような場所で車が停まった。


一夜が、シートベルトを外すから、私もシートベルトを外した。


「あー、なんか肩凝った。久しぶりに運転なんかしたからかな」


と、肩をまわしている。


車から降りるのかと思ったが、一夜は特に降りる気配は見せない。



「真湖ちゃん。
こっからだとあまり見えないけど、あそこにうちの持ってる船内廃棄物なんかの中間処理場があってね」


一夜は、その方向を指差していて、そちらに私も視線を向けた。


工場のような建物が、暗闇の中うっすらと見える。


「聖王会でってより、永倉の所が管理してて。
うちで死体処理する時、大体ここを使ってる」


その言葉に、背中に冷たい汗が流れるのを感じた。


「あっちの倉庫とかに連れ込んで、殺ってから。
夜中、あそこに運んで。
昔程、今は埋めたり沈めたりもせず、そうやって処分してて。
高温で、骨も残らないくらいに焼くから」


骨も残らないとか、一体何の話なの?


頭がそれを理解する事を、拒絶してる。


「俺、真湖ちゃんが、あの警察官の娘なのを初めから知ってたよ。
聞いてる?」


一夜のその言葉に、心臓が早鐘を打っている。


一夜が恐くて逃げ出したいけど、体が震えて力が出ない。



「真湖ちゃんがそうなんだって、
初めから分かっていたよ」


「知ってて、一夜は私を…」


だから、一夜は私をずっと側に置いていた。


でも、その目的が一体なんなのか、分からない。


先程の永倉ジュニアもそうだけど、一体私のお父さんがなんでこの人達と、関わりがあるの?


私のお父さんは、S県警警備部公安一課で、国内で起こったデモの対応とかで、暴力団と関わる事なんて、それほどないはず。


「うちの組を嗅ぎ回ってた、あのウザイ警察官。
その娘の真湖ちゃんが、聖王会会長の俺に近付いて来て、一体何が目的?」


「一夜、一体何言って――」


その言葉を遮るように、私の額に突き付けられた銃口。


一夜は右手で、黒い拳銃を握っている。


「俺も、女は殺りたくないんだけど」


その言葉と同時に、一夜は引き金を引いた。



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