夜と遊ぶ
「綾瀬さんがジュニアに捕まる前に、幸子さんに渡していたのを俺が受け取った。
綾瀬さん、同じ警察内部の人間よりも、俺の事を信用してくれていて。
それ、あの日なんだよ。真湖ちゃんを拾った日」
あの夜、それで一夜はあの辺りを一人で歩いていたのか。
「まあ、USBの中見てみたけど、これだけでナガやんを挙げられるとは思わないものだったけど。
まあ、ちょっとは困るだろうね。
綾瀬さん、聖王会よりも、ナガやんを挙げる事に躍起になっていたから」
「一枝さんを?」
聖王会じゃなく、何故、堅気の一枝さんの方を?
「綾瀬さんが世話になった上司の娘が、昔ナガやんと付き合ってて」
"ーーナガやんだって、昔、警察官の娘と付き合っていたしーー"
先程、一夜が永倉ジュニアにそう言っていた。
「その交際は、警察官の娘とヤクザの息子だから周りから反対に合い、上手く行かなくて…。
で、ナガやんと別れてからその女の子が自殺したんだけど。
娘が亡くなってから、父親のその人は心を病んで警察官を辞めたみたいで。
だから、その人の無念を晴らす為に、ナガやんをって綾瀬さん」
「でも、その娘さんは一枝さんと付き合ってただけなんでしょ?」
「そうなんだけど。
ナガやんがそうやって死ぬように、追い詰めたような気がする…。
怖いよ、彼は」
一枝さんが時折見せる、冷たい表情が頭に浮かぶ。
あの人が怖い事は、分かる。