夜と遊ぶ
「真湖ちゃん、最後に1つだけお願いがあるんだけど」


「何?」


「真湖ちゃんの誕生日を、やり直したい」


「え?」

私の誕生日?


「ほら、俺達が出会った日。
真湖ちゃんの誕生日は、ちゃんと祝えなかったから。
それだけが、心残りで」


そういえば、そうか。


お祝いして貰ったけど、もう日付が変わっていて。

10月6日の一夜の誕生日になっていた。


「本当に、偶然だよね。
俺達、誕生日が1日違いで」


「うん。だから、あの夜一夜に出会えたのかな」


「俺達は、同じ夜で繋がっているから」


あの夜は、私の誕生日で、一夜の誕生日でもあった。


「次の誕生日。
10月5日の夜。
日付が変わる…、そうだな?
10分くらい前に、あのラブホテルに来て?」


私達が出会ったあの夜と、初めて一夜に抱かれた、あのラブホテルのあの部屋。


「707号室だよね?」


「そうそう。鍵開けておくから、勝手に入って来て」


「…でも、私、行くかどうか分からないよ?」


きっと、その誕生日の日も、私は一夜を好きだと思うし、会いたいと思うと思うけど。


でも、そうやってまた会ったら、辛くなる事くらい、今からでも分かる。



「真湖ちゃんが来なくても、俺は待ってるから。
そうだな?ケーキはもちろんだけど、千本の真っ赤な薔薇の花束でも用意しておく」


「え、なんか、キザ」


そう言うと、一夜は、アハハと笑っている。


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