夜と遊ぶ
◇
「本当に、真湖ちゃんのマンション迄送らなくていいの?」
「うん。ありがとう」
あの後、一夜にはあの港からすぐ近くにある、駅迄送って貰った。
早く一夜と離れないと、このままずるずると離れられなくなりそうだから。
「真湖ちゃん。お父さんの事はごめんね」
「別に、一夜のせいじゃないよ。
それに、あくまでも一夜の憶測なんでしょ?
お父さんは生きてるって、私は思っていていいかな?」
「うん…」
駅まで送って貰う間少し話したが、
証拠が何もない以上、永倉ジュニアが私のお父さんを殺した事は、
もうどうにも出来ない、と一夜に言われた。
それに、これ以上その事に私が関われば、
今度こそ、私が永倉ジュニアにどんな目に遭わされるか分からない、と。
「一夜、大好きだよ。
出会えて良かった」
そう言うと、いつも向けてくれていた笑顔で私を見てくれる。
「真湖ちゃんは、本当に可愛いな」
そう言って、私の頭を撫でてくれた。
そして、
「真湖ちゃん、俺の分も立派な警察官になって」
敬礼するように、右手を額に当てている。
「うん」
私も同じように、敬礼すると、一夜の車から降りた。
車から降りて、すぐに駅に入り柱で隠れると、
床にゆっくりと座り込み、泣いた。
もう、限界だった。
なるべく、一夜とは笑って別れたくて。
泣ける場所を、探していた。
ここなら、一夜に見られず、泣ける。
「一夜…ずっと一緒に居たかったよ…」
その後は、大きな声を出して泣いた。
駅構内を行き交う人が、そんな私をチラチラと見ていたけど。
涙腺が崩壊して、ずっと泣き止めなかった。