夜と遊ぶ
久しぶりに訪れた、S町の歓楽街にあるラブホテル。


その707号室。


思い出の場所がラブホテルってどうなの?と思うけど。


"――鍵開けておくから、勝手に入って来て――"



707号室のドアハンドルを握り、扉を開ける。


中に入り、部屋へ行くと、目の前が真っ赤になる。


部屋中に、赤い薔薇が散りばめてある。



「一夜…?」


まさか、来てないの?

でも、扉の鍵は開いていた。


テーブルの上には、あの夜のようなバースデーケーキが置いてある。


去年、生クリームのケーキだったけど、今年はチョコクリームの丸いホールケーキ。


一夜に言った事はないけど、私が生クリームのケーキよりも、チョコクリームのケーキの方が好きな事を、気付いたのだろう。


あれかな?クリスマスイブのあの夜食べた、ブッシュ・ド・ノエルを食べる私を見て。


そのチョコクリームのバースデーケーキには、沢山のフルーツだけじゃなく、
チョコレートのプレートが載っていて。


そこに書かれているのは…。


"mako happybirthday"


私の、名前だけ。


「一夜…」


なんで、一夜の名前がないの?


腕時計を見ると、ちょうど0時。


一夜の、誕生日になった。


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