夜と遊ぶ
「あの、一夜は?」


「ニュース見てませんか?」


そう、淡々と言われて。


「嘘ですよね?
一夜が撃たれて、亡くなったって?」


「俺も、さっきニュースで少し見ただけなんですよ。
携帯の電源も0時くらいから落としているので。
きっと、今頃色々な人間が俺に電話してるでしょうね。
俺は加賀見会長の秘書なので。
あ、昨夜は休みを貰ってました。
女性とデートという名目で」


早瀬さんがそう話す感じを見ていると、この人は何もかも分かっているのだろうか。


「あの、早瀬さん。
あなたは、何を知っているのですか?」


「加賀見会長から頼まれてました。
夕べ、自分の代わりに、このホテルの707号室の部屋に、ケーキと薔薇の花を届けて欲しいと。
実際、薔薇を運んで来たのは、花屋ですが。
千本近い花を個人で運ぶのは大変だから」


千本近い…。


「あの、薔薇の花束は、千本ではないのですか?」


「999本です。
ああ、初めは千本の予定でした。
加賀見会長と俺も一緒に花屋に予約に行ったのですが、花屋の店員に言われて。
薔薇は贈る本数によって、意味が変わるって。
それで、加賀見会長その場でスマホで調べて、千本じゃなく、999本でと頼んでました」


あの薔薇の数に、意味があるの?


1000本ではダメで、999本…。


私はスマホで、それを調べる。


999本の赤い薔薇の意味は、
何度生まれ変わってもあなたを愛する。


< 156 / 215 >

この作品をシェア

pagetop